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トイレの失敗が多い認知症の人への対応。まずは分析から始めよう

 

 90歳代男性。トイレで排尿をする際は立って済ませようとするが、勢いがない為に毎回と言っていいほどスボンに引っ掛けてしまう。昔からのこだわりで、ズボンの下にズボン下、そしてお腹を冷やさない様に2メートル程ある腹帯を巻く為に更衣が大変で、職員、本人共に大きなストレスとなっている。

 この日も、Fさんがフロアで見当たらない為、本人の居室のトイレを覗くと既に排尿しており、床は尿で汚染、下着も全て尿で汚染してしまったようで、汚染した衣類を自分で窓際に干そうとしていた。職員が声を掛け汚染した衣類を回収しようとすると、『干しておけばいいから、ここに置いておけばいいだろ!』と声を荒げ、職員が不衛生だからと色々説明するも『ごちゃごちゃうるさい。もー頼むからほっといてくれ』と職員を杖で追い払ってしまった。

 次は失敗させまいと、食事の前に事前にトイレにお連れし、ズボンを下ろす動作から座らせるところまでを職員が行なったが、自分のペースで出来ない事に苛立ち、「いちいちうるさい!」と怒ってしまった。

 気がつくと部屋に尿汚染した物をそのまま干す為、尿臭が染み付いてしまっていた。

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出来る事、出来ない事の分析

 自分のペースを崩される事に大きなストレスを感じている様なので、Fさんの排泄動作を観察し、何が出来て何が出来ないのかを明確にした。

分析①
 1日を通してトイレに行く回数は、平均7回程で午前中に3回、午後に2回、夜中に2回だった。朝食後に利尿剤を飲んでいる為、午前中に頻尿が多くなる。

分析②
 尿意便意は曖昧で、トイレに自分から向かう時もあれば、何かに夢中になっている時や椅子でうたた寝している時は、椅子の上でそのまま尿失禁している事もある。

分析③
 次に排泄動作の観察をした。ベルトを外す事、ズボンを下ろす事から、排泄後に腹帯を巻いてズボンを履くまでは、時間は掛かるものの自分で出来る事がわかった。

分析④
 ズボンが汚染した事は汚染具合によって気付く時とそうでない時があり、尿汚染したまま履いている事もあった。また紙パンツとパットの使用をしており、パットは昼用と夜用をそれぞれ使っているが、パットや紙パンツの汚染に気付くも処理の仕方が分からない様子。

分析⑤
 便意を催した時は便座に座り排便、排尿をする事が殆どであったため、座ってする事に抵抗がある訳ではない事もわかった。

出来ない所だけ、お手伝いをする

 課題分析から、衣類の着脱は一人でも綺麗に出来る事、尿意は曖昧である事、汚染したパットの処理はわからない事、が判明した。また、座って排尿する行為自体には抵抗がない事もわかった為、どうにか座ってもらえないか、声のかけ方などを工夫する事にした。

 とある日の午前中、Fさんがおもむろに立ち上がりそそくさと部屋に入って行った為、後を着けるとトイレに入って行った。ベルトと腹帯を外し、ズボンを下ろそうとしている所でFさんに声を掛けた。

『トイレですか?しばらくお通じが出てないみたいなので、座ってみませんか?』

 この時は受け入れてくれ、『そうなんだよ。ちょっと頑張ってみようか』とスムーズに便座に座る事ができた。20分くらいして再びトイレを尋ねると、すでに排尿を終えズボンを履いている最中だった。ズボンを履く動作は出来るので、ここでは声を掛けずFさんのペースでお任せした。

 また別の日には、トイレに行く様子が無かったので声を掛けトイレまでお連れしたが、トイレを見た途端『今じゃない』と背を向けてしまう。職員より『座らなくていいのでパットだけ交換させて下さい。』と声を掛けると、それだけならいいよとトイレの中に入ってくれた。

 ズボンを下げた所で、『パットの交換をしたいので、一度座ってもらえますか?』と声を掛けると、座って頂けたのでパットのみ交換しその場を去った。しばらくすると、排尿をしっかり済ませてから自己にてズボンを履いて、出て来た。

 時間は掛かるが、出来るところは全て本人にお任せする事で自分のペースを守る事が出来、声を荒げる事が無くなった。ストレスが減ったせいか、パットを変えたい、便座に座って欲しい、と言葉だけのお願いをスムーズに受け入れてくれるようになった。

Fさんの関わりより学んだ事

 誰しも自分のペースがある為、それを他人に崩されるのはとても大きなストレスと感じる。しかし、全てを任せてしまっても、認知症のために今までできた事が出来なくなる。自分だけではうまく判断が出来なくなる事が増えてくる為、それもまたストレスとなる。

 何が出来て何に手伝いを必要としていふのか、その人の行動をしっかりと観察し見極める事が大切だと感じた。

[参考記事]
「認知症による排泄介助拒否と物盗られ妄想の実例」

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