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認知症により汚れた下着を隠そうとする行動に対する対応

 

 Aさん(女性)は一人自宅で過ごしていました。しかし80歳になったときに「家族や親せきには迷惑をかける様な事はしたくない」と、自分から入居施設を探し、3年前から介護付き有料老人ホームに入居されました。

 入居をするために認定調査を受け、なんとか要支援1の判定が下りるくらいの状態の為、特別介助を受ける事もなく、過ごしていました。

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物盗られ妄想が始まる

 Aさんの家族が面会に来られ、タンスの整理をしてくれた時に、家族が職員に「下着がなくなっている」と相談に来ました。職員も一緒にタンスを確認したのですが、確かになくなっているようで、家族と一緒にAさんに聞いてみると、「最近下着が盗られるようになった」「お金もだいぶ盗られてしまって全然ないの」等と話されたのです。

 もともとお金はホームに持ち込んでおらず、必要時にはホームが立替えて、利用料金と一緒に立替えたお金を請求するシステムをとっていました。そもそも契約はAさんも一緒に行なっているので、理解していたはずでした。

認知症の発症

 その話を聞いて家族もおかしいと感じたのでしょう。職員には「とりあえず下着は買ってきます」と、Aさんと一緒に外出し、多めに買ってきてくれました。

 家族が帰る際には、職員の方から「できれば来月もタンスの中を確認してほしい」と伝え、了解して頂いたのです。そして翌月ご家族に再度下着の確認をしてもらうと、また数が少なくなっていたのです。

 その頃には職員との会話の中でもおかしいと思う事が増えてきていたので、Aさんを病院に受診させた結果、アルツハイマー型認知症と診断されました。

 やはり認知症からくる「物盗られ妄想」だったようです。Aさんが家族と受診をしに行ってる間に、ご家族からも了承を得て、居室の中の下着を探した所、食器をしまう棚の奥の方に何枚も発見されたのでした。

 下着には失禁されていた形跡が見られた為、失敗してしまった恥ずかしさから隠すようになったのだろうと推測し、今後の対応について話し合いを行いました。

どう対応するべきか

 認知師の初期という事で、しっかり出来る事や理解出来る事は十分ありますし、あまりAさんに「汚れた下着は隠さないで職員に言ってください」なんて事は言えません。相手のプライドや自尊心を傷つけてしまえば、自分に失望して、物事のやる気がなくなり認知症が早く進行してしまう事もあります。

 Aさんの気持ちを損なわないように対応する方法、それは相手に恥ずかしいと思わせずに、下着を洗濯に出してもらう事です。隠してしまう場所がわかっているので、Aさんが居室にいないときにこっそりその場所から下着を持っていき、洗濯に持っていく事は一つの案だと思います。そうすればAさんも嫌な思いもしません。

 しかし食器の棚に入れてしまうのは衛生的にもよくないし、もし隠してしまう場所が変わってしまったら、また探す事から始めなければなりません。

回収ボックスを作成して対応する

 そこで職員は、Aさんのトイレに、回収ボックスを置く事にしました。女性がナプキンを捨てるような感覚で出来るように、小さいゴミ箱に黒いビニール袋を入れて、置くようにしたのです。

 毎日職員は、Aさんのトイレ用ごみ箱を確認していましたが、設置後5日くらい経った時に、捨ててあるのを発見しました。きちんとそこに捨てると認識してもらえたのです。

 それからは時々確認し、汚れていたものがあれば回収できるようになりました。職員も「ゴミをもらいますね」と伝えるだけですので、相手に嫌な思いをさせる様な事はありません。

 認知症の方でもすべてが分からなくなるわけではありません。いつでも、どんな状況になってしまっても、相手の尊厳やプライドを気づ付けない対応をしていく事が大切です。

[参考記事]
「[認知症] 汚れた下着や物を隠す理由と対策」

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